伝統を守るには変わることを恐れない【出典】旭酒造株式会社

桜井博志社長

「変えるべきでない伝統」は何が何でも守り抜き、一方で「大事なものを守り抜くために変わること」を恐れない。それが旭酒造の伝統です。

「伝統が大事でそれを守るには、変わることも必要で恐れてはいけない」という理念ですね。

「獺祭(だっさい)」というお酒を造っている山口県の旭酒造さん。一時は潰れかけたんですが、今や世界20か国に展開しています。

ホームページのトップでも伝統と酒造りへの思いが強く書かれています。

「旭酒造は酒造りが好きです。」
ともすれば一時のワインがそうだったように、 
吟醸酒の世界も、通でなければ分からないとか、理解しづらいモノのように語られます。

絶対に違います。
真に美味しい酒は、誰が飲んでも美味しいモノです。
旭酒造は真に美味しい酒を目指します。

素晴らしいですね。ある程度の歴史が築かれてきて”伝統”というブランドが付くと、「昔からこうだから、ココはこうあるべきだ」というしがらみに縛られてそれが衰退の原因に繋がったりするものです。

ですが、旭酒造さんはそういった”伝統”ブランドのしがらみに縛られることなく、「酒造りが好き」「美味しいモノは美味しい」という点に絞って活動展開されているように感じます。

伝統守ることも大切なことですが、

「ああ、美味しい」のひと言を頂くためです。山奥の小さな酒蔵にとって、これだけは譲れない唯一の財産が、そのひと言なのです。

誰かに感動や幸福感を与えてこそ、活動の意義があると思うんですよね。

<スポンサーリンク>

盛岡の伝統さんさ

伝統を守ることは変わること

さんさ踊りにも”伝統さんさ”というものがあります。岩手盛岡各地に伝わるそれぞれの伝統的な踊りがあって、それぞれ踊り方が違います。

最近耳にしたのは、「伝統さんさに若い人が入ってこなくて、高齢化が進んでいる」ということです。ある伝統さんさでは、この状況に危機感を感じて、それまでしていなかった一般公募をし始めたんだとか。

高齢化が進んで若い人が入らないのは、単純に若い人が伝統さんさに魅力を感じる人が少ないのでは。この現実に目を向けずに、”伝統”ブランドを貫き通そうとして変わろうとしなかったことが原因だと思います。

諸行無常という言葉があるように、世の中は常に同じ状態が続くことはありません。変化出来ないものは衰退するだけです。特に時代背景を考えると、今は娯楽の選択肢が多いですし、若い人からみれば”伝統さんさ”も数ある選択肢のうちの一つに過ぎないのだと思います。

伝統さんさだけでなく、盛岡さんさ踊りも、若い人世代に魅力を伝える事を意識して活動していかなければ、衰退していくように思います。そのためには、

「変えるべきでない伝統」は何が何でも守り抜き、一方で「大事なものを守り抜くために変わること」を恐れない。

という考えが必要ではないでしょうか。

変わること、新しいことを始めるのって面倒だし億劫です。人間って基本、安定が好きで変わろうとしませんからね。

とはいえ、そこに居座っていては衰退するだけです。伝統を守るためには、変わる必要があるのです。そして、やり始めのきっかけになった「好き」とか「楽しい」の気持ちは忘れちゃいけないと思います。誰しもこの気持ちが無いと続けられません。