1990年代、6000億円近く売れていたCD売上金額が、現在では3000億円弱と半減しています。
現代は音楽のデジタルデータ化&販売に伴い、CDが売れない時代になっています。違法ダウンロードや共有プログラムの問題も、販売低下を後押ししています。
そんな中、「これが音楽の未来!」をスローガンに、新しい音楽活動をしているアーティストがいます。
世界の音楽CDパッケージ売上の状況
新しい活動をしているアーティストを紹介する前に、もう少しだけ現在の厳し~い音楽業界の状況を説明しておく。
日本のCDの売り上げ総金額が、2009年にアメリカを抜いて世界1位に。
2000年初頭、アメリカで音楽ファイル共有プログラム「NAPSTAR」が登場して以来、世界中でCDの売り上げ激減しています。
市場が日本の何倍もあるアメリカが、CDの売り上げでは日本より少ないというのはただ事ではありません。音楽データの共有や違法ダウンロードが横行しているのです。
デジタルミュージック&CDを含めた世界規模での音楽ソフトの売り上げは、02年に約262億ドル(約2兆5700億円)だったのが12年は約165億ドル(約1兆6200億円)と4割近くも減っています。
原因と考えられているのが、CDなどのパッケージ販売が「バラ売り」の配信に変わったことで単価の下落を招いたことです。
2012年度の日本では、AKB48等のアイドルグループの活躍や、CDのバリエーションを増やす方式を採用することにより、微増になっているそうです。
CDが売れない代わりにライブ公演は増加
CDが売れない状況に反比例して、ライブ公演本数は増加しています。CDが売れなければ、他の収入源はライブやグッズ販売です。CD売上減を何かでカバーしないと、音楽アーティストや関係業界は食べていけませんしね。
とはいえ、CD売上全盛期から失われた3000億円をカバーするだけの興収は獲得出来ていないでしょう。
「新しい音楽のかたち」アマンダ・パーマー -Amanda Palmer-
このような冷えつつある音楽界で、新しい取り組みをしているアーティストがいます。
それがアマンダ・パーマー(Amanda Palmer)です。
ソーシャルメディアとネットを活用した、新しい音楽と創作活動を行っています。
アマンダ・パーマー(Amanda Palmer)メジャーデビュー後、初のCDリリースで25,000枚を販売。
レコード会社から失敗と言われ、音楽業界に疑問を感じ、自らレーベルを脱退。インディーズとして活動を開始する。
自分らの音楽を無料で配信し続ける傍ら、「私の音楽活動の為に協力して欲しい」と、ソーシャルメディアとクラウドファウンディングで寄付をお願いしたところ、1か月で1億円が集まる。この時の協力者は、CD販売枚数と同じく25,000人であった。
【参考動画リンク】TED アマンダ・パーマー 「“お願い” するということ」
音楽業界の多くは、「音楽でどうやって稼ぐか」「どのくらい稼ぐか」「違法ダウンロードを防ぎ、どれだけCDを売るか」が重視されています。AKB48の総選挙で、CDに投票権を付けている販売法から見ると分かりますよね。
しかしアマンダ・パーマーさんの音楽活動スタイルはこれらとは違います。要点を以下にまとめてみました。
- 音楽は自由で制限されず、共有し拡散していくものだ。
- 私の音楽はデジタルデータで無料配布しています。
- 私の全ての音楽はライセンスフリーです。
- アーティストが生き残り創作活動をしていくためには、観客が直接サポートするシステムが必要があると考えている。
- もしあなたが作品を愛し、お金をもっているのであれば、それが後に帰ってくると思います。
- あなたがリッチで、私のレコードを心から愛して下さるのであれば、支援をして欲しい。
- あなたが私の作品を手に入れたら、共有・コピーしてどんどん拡散してください。私たちはメディアなのです。
まとめると、「もしあなたが私の音楽と創作活動に共感してくれて、お金を持っているのであれば、支援頂けると助かります。私たちの音楽と創作物はどんどんシェア&コピーして拡散してもOKです」というスタイルです。
アマンダさんが出演したTEDのプレゼンでは、こう締めくくられています。
みんな誤った問いから離れられないんです。「どうやって音楽にお金を出させるか?」
でも、こう考えたらどうでしょう?
どうすれば音楽に、お金を出せるようにしてあげられるだろう?」
【参考動画リンク】TED アマンダ・パーマー 「“お願い” するということ」
アマンダさんの音楽に対する愛の深さと、活動を続けていく意欲が感じられる言葉ですね。
「共有の時代」言われている現代、こういう音楽の活動形態が今後増えていきそうです。音楽の未来はこれからどんどん変化し続けていきます。
【幸呼来】
私が子供の頃はまだレコードでした。中学生からはCD,大学になる頃にはMD。そこへ彗星のごとく現れたファイル共有ソフトやiPOD、iTune-music、You tube閲覧で、すっかりCDを買うことが少なくなりました。わずか20数年でこれだけ変化するとは思いもしませんでした。
音楽の価値は不変だと思いますが、音楽アーティストとしての活動形態は、不変のままでは活動出来ない時代になってしまったと感じます。変化し続けることが出来る者が生き残るのは、今も昔も変わりません。