2008年に導入されたふるさと納税制度。自分の意志で他県の市町村自治体に寄付をすることで、特産品などの特典がもらえる事がある。さらに確定申告すれば、年収に応じて寄付したほぼ全額が戻ってくるという制度である。
わたくし名前だけは知っていたのですが、自分の住んでる自治体では、ふるさと納税についてどういう取り組みをしているのか興味が湧いてきたので調べてみました。
ふるさとチョイスという便利なサイトがあって、特典別や地域別などで簡単に調べられる便利なポータルサイトがある。自治体によって松茸やら高級牛肉やら宿泊券やらの特典が凄い。みなさんもぜひ見て欲しい。
で、盛岡市を検索した結果がこれだ。
・・・盛岡市では「特典のご用意はありません。」
使い道も明示してあったので見てみると、
具体性無さすぎ。
ちなみにお隣の北上市ではどうなのか調べてみる。
充実しまくり。納税額に応じて特典が素晴らしい。
そして使い道の説明が、
文章はシンプルだが、画像も入れていて使い道のターゲットを明確にしている。分かりやすくていいですね。これを見るだけで北上市議員はやる気があって良い街なんじゃないかなという気がしてくる。
これだけの比較をすると「盛岡市、やる気あるのか?」と思ってしまうが、盛岡市側は特典を用意していない説明も用意しておりました。盛岡市のホームページから引用。
・ご提案・ご意見の趣旨
日本各地のふるさと納税特典がマスコミに多く取り上げられ,話題となっています。しかし,盛岡市ではふるさと納税の特典が何もなく,残念に思います。少額でも特典があればうれしいですし,名産品や盛岡市のPRになるのではないでしょうか。例えば「わんこそば」「冷麺」「じゃじゃ麺」「はっと鍋」の「四大麺」や宿泊施設の優待券など,特色を前面に出した特典へ変更すれば,ふるさと納税の効果が上がると考えています。そして,感謝状を贈るなどして表彰すれば,盛岡市のファンがさらに増えると思います。ぜひ,ふるさと納税の再検討をお願いします。
・市の考え方
盛岡市では,これまでお礼状のほか, 5000円以上の寄附者に対し,市内教育施設の無料入館券や石川啄木の詩を入れたコースターなどの記念品をお送りしておりますが,過去には,「寄附なのだから記念品は不要。もっと有効に活用してほしい。」との声が寄せられたこともございます。最近では,マスコミなどで取り上げられる機会も多いせいか,「盛岡市でも特産品を贈るべきではないか。」とのご意見をいただくこともあります。
盛岡市といたしましては,従前からの寄附金の活用事業である産業振興,環境保全,福祉および震災復興のメニューに加え,今年度からいわて国体の応援メニューを加えることや,寄附金の活用実績をよりわかりやすく紹介することでPRを図ってまいりたいと考えており,現時点では,費用をかけて特産品などを贈呈することは考えておりません。
【引用】盛岡市ホームページ ふるさと納税について
ご意見者の「地域を利用した特典を付ければいいんじゃないか」という意見はごもっともである。集まったふるさと納税金があれば、地元の特産品を買い上げることができる。それだけでもそこそこの自治体においての経済効果はある。魅力的な特典を付けることで、寄付金額も集まりやすくなるしね。
一方で市の考え方も分かる。「納税」と名称が付きつつ善意の寄付金だからね。
・・が、「もっと有効に」と言う以前に、盛岡市では寄付金額は毎年300万円前後しか集まっていない。これっぽっちの寄付金額なのに活用メニューを増やしたところで、いったい何が出来るっていうんじゃ!そもそもメニューには震災復興は存在していないし、今までの活用実績をチェックしましたが、震災復興に使われていることは1度も無い。
⇒盛岡市のふるさと納税制度「過年度の使途状況について」
そして、「現時点では,費用をかけて特産品などを贈呈することは考えておりません。」と言うあたりは、議会が思考停止しているとしか思えない。
別に特産品送らなくてもいいんですよ。人口8000人に満たない北海道の東川町は、アイデア勝負でふるさと納税や企業寄付で6000万円も集めているんですから。
⇒これといった特徴のない町の成功事例にみる活性化とふるさと納税6000万円を集めた方策とは?
まさにアイデア。寄付金の使い道で人気が高いのが植林。ふるさと納税者は植林も自分ですることが出来るらしい。地方の役に立って自分が植えた木々が育っていくなんて素晴らしいじゃないですか。
「寄付なんだから、貰ったお金はそのまま使うんですよ」で突っぱねないで、盛岡市でもこれくらいのアイデアを出していろいろ実験してみるくらいのガッツは欲しい。
ふるさと納税導入で人口の多い自治体ほど住民税がマイナスに
ここで話をタイトルに書いた「ふるさと納税制度は住民税奪い合いの戦争だと思う」に戻す。
ふるさと納税制度はアイデア次第で全国から寄付金を集めることが出来る制度。ただし問題になるのは、寄付した金額に応じて住民税が控除されるという点。
たとえば、私が北海道の東川町に4万円のふるさと納税をしたとする。そして年末に確定申告をすれば、盛岡市に支払った住民税から3万8千円が自分に戻ってくる。盛岡市の住民税収入はマイナス3万8千円ということになる。こんな人が100人いればあっという間にマイナス300万円オーバーで、盛岡市が得ている寄付金は差し引きで赤字だ。
市のホームページでは公開していないけど、赤字か差し引きゼロかと思う。理由は2つ。1つは、単純に人口が多いほど、他の自治体にふるさと納税を収める人は多くなること。2つ目は、盛岡市出身で他県に住んでいても、地元愛だけで出身地に寄付する人はそうそういないと思われる点。使い道も良く分からない事業に寄付する気になる人なんて多くは無い。「これがしたいから寄付して欲しい!」ってのが無いんですよ、盛岡市は。
ここで、ふるさと納税による住民税控除の赤字を公開している自治体をご紹介する。
・福岡市
平成 21 年 6 月末現在、ふるさと納税による福岡市への寄附は、106 名、3,082,634 円である。また、住民による他の自治体へのふるさと納税に伴う平成21年度の住民税の減収額は、17,675,219 円であり、このほかに PR 等の経費として約 190 万円をかけている。
【引用】ふるさと納税の現状と課題
寄付金300万円に対して住民税控除が約1760万と大赤字。人口が多いほど、自治体のふるさと納税による住民税控除額が大きくなるのである。特典や利用用途のPRを頑張っていてもこんな状況である。盛岡市でもこれと同じことが起きているんじゃないでしょうか。
他県に住んでいる盛岡地元の人でも、あの具体性の無い使用用途と特典も無いページを見たら、全員が盛岡市に寄付したいと思うでしょうか。まず盛岡市に対するふるさと納税についての話題が起こらないだろうし、ページを見ても「別にしなくていっか」で終わる人が多いと思う。
それでも寄付したいと思う人は偉い!でも私なら寄付しない。損得勘定が強いし、施策を頑張っているところに寄付したいと思うしね。頑張りや熱意は行動に現われ、それが人の心を動かすのです。
だから頑張らない自治体は負け。「地元愛」という見えない力に頼っている自治体は負け。思考しない自治体は負け。ふるさと納税制度は、住民税の奪い合いの戦争だと思います。
アイデアも出せず、お金の獲得もできない自治体の発展と存続は難しいのです。千葉県富津市も財政破たんは目前ですよ。