昔から手はいろんな面で酷使していて、私が慢性的に悩まされている持病の一つに腱鞘炎があります。
おまけに加齢と共に治りにくくなっているし、完治しない状態でちょっと無理しちゃうと慢性化が酷くなります。
結果的に年間手首や指がいつも痛みっぱなしで、酷い時だと右手の親指が10カ月間腫れっぱなしってこともありました。
ですが、おかげで腱鞘炎についていろいろと学ぶことができて、今では毎日10時間くらいPCやマウスを触っていても腱鞘炎になることはありません。
私が長年かけて辿り着いた腱鞘炎のケア方法をご紹介します。
目次
まず頼るのは整骨院、整形外科
腱鞘炎になってまず頼るのは整骨院や整形外科。治りが悪くなるとほとんどの人はこの選択になりますが、整骨院に行ってもまぁ治りません。
腱鞘炎患者に対して整骨院が出来る事といえば、
- 赤外線を当てて温める
- 電気を通す
- マッサージ
- 湿布薬を塗る・貼る
と、これくらい。
これは”対症療法”と言って、「今ある痛みを和らげる治療」です。
とはいえ、患者の大半はこう思っている。
この勘違いが腱鞘炎の治りを遅くしている原因なんですね。
鎮痛消炎剤の効果
腱鞘炎のケア方法をご紹介する前に、まずは湿布に入っている鎮痛消炎剤がどんな効果を持っているかを説明したいと思います。
直していくうえでこれ知っておくことは大事ですので、ちょっと長いですが読んでおいてください。
腱鞘炎になって痛んでいる時は、プロスタグランジンという物質が分泌されています。
プロスタグランジンが痛みの元にもなっているんですが、血管を広げて血流をじゃんじゃん促進させて、壊れた細胞にいろんな栄養を送り込んで修復させる働きもあるんですね。
患部が熱を持ったり、腫れたりするのは、プロスタグランジンが分泌されて血管が拡張されているからです。
じゃぁそこに湿布を貼るとどうなるか。
湿布には炎症を抑える物質が入っています。パッケージに「鎮痛消炎剤・インドメタシン配合・ロキソプロフェン」とか書いてますよね。
これはお薬NAVIなんかにも書いてますが、あくまで症状を抑えるだけの効果で、熱や痛みの原因そのものを治すことはできません。
つまり、湿布を貼ることで痛みや腫れは抑えられるんですが、逆に細胞を修復させようと頑張っているプロスタグランジンの分泌も抑えることになってしまいます。
その結果、壊れた組織や細胞は治らずそのまんまか、治りが極端に遅くなるかになります。
成分(一般名) : ロキソプロフェン ナトリウム
【働き】
炎症をしずめて、腫れや発赤、痛みなどの症状をおさえます。熱を下げる作用もあります。ただし、対症療法薬ですので、熱や痛みの原因そのものを治すことはできません。
【薬理】
炎症や発熱を引き起こすプロスタグランジン(PG)という物質の生合成を抑制します。プロスタグランジン(PG)の合成酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を阻害することによります。
【出典】おくすりNAVI
じゃぁなぜ湿布を処方する?
不思議ですよねぇ。どうして治りを遅くする湿布を処方するんでしょうか。
この理由は2つあって、「1.痛みは新たな痛みを引き起こすから」と「2.再診の促進」です。
まず1つ目の理由。
痛みがある状態で生活していると、体は常に緊張状態が続きます。緊張状態が続いていると、他の部分まで痛くなってきてしまうんです。
例えば肩こりの場合、「肩こりで右肩が痛い」という状態でずっと生活していると、右肩の痛みで体がこわばった状態が続いて、左肩や他の部分の凝りも起こる可能性が多くなります。(肩こりスパイラルと言います。)
ですが、薬で痛みを取ってあげると体はリラックス状態になって、体のこわばりが少なくなって痛みが他の部分へ起こりにくくなります。
腱鞘炎については根本的な治療方法が確立されていないので、赤外線温熱をしたり、湿布を処方してとりあえず痛みを和らげて自然治癒を待つ事しか出来ません。
次に2つ目の理由。
痛み止め薬を処方することで患者は満足して帰っていくし、症状によっては治りが遅くなって再診確率も多くなって収益増大するという理由もあります。
こんなことほとんど誰も言いませんが、整骨院や整形外科は開院時の設備投資借金を返すことに必死になっている側面もあるんです。
私の医師の友人たちは「治療も大事だけど商売として考えることも大事」と言います。医療行為は神聖なものとして考えられやすいですが、商売の面もあります。
特に必要のない検査を促す、専門分野じゃないけど何回かは診て軽い対症療法だけ行って帰す、なぜなら商売だから、ということが行われています。
湿布・鎮痛消炎剤を使い続けた結果治りが極端に遅くなった実例
次に、湿布・鎮痛消炎剤を使い続けたことで治りが遅くなった実例紹介です。
と言っても私の過去2回の経験になります。
1回目:20代の頃の腱鞘炎
マウスの使い過ぎ、キーボードタイピングのし過ぎで親指側の手首が痛むようになって、日に日に悪化。
整形外科に行ったらボルタレンゲルと湿布を処方される。
ボルタレンゲルと湿布を使えば、患部が冷え続ける感じがして痛みが消えたように感じてたんですが、ゲルや湿布の効果が切れる朝方の痛みは変わらないまま。
2カ月経っても朝方の痛みがほとんど改善しないし、薬にも慣れてきているせいか、ゲルを塗っても湿布を貼っても時々ズキッと感じるようになった。
ゲル薬と湿布薬のせいで皮膚も白く変化してきていたので、思い切ってゲル薬と湿布の使用を中断。
そしたら2週間後に腱鞘炎は治った。
この時は鎮痛消炎剤が治りを遅くしている考えや確信はありませんでした。
2回目:30代の腱鞘炎
久々の腱鞘炎。でもまぁすぐ治るだろうと放置して仕事していたら日に日に悪化。
さらにベンチプレスの無理も祟って、腱鞘炎が一気に悪化。指も手首もほとんど曲げられないくらいの痛みに悶絶。
最初は整形外科に行って同じくボルタレンゲル、湿布、電気治療をされたが、1カ月経ってちょっと動かせるくらいまでは改善。
でもそこから腫れと痛みは軽減されず、他の治療法があるかと期待して2つの整骨院に行ってみるものの、整形外科とほぼ同じ施術。
「なるべく冷やしたほうがいい」とアドバイスされて、保冷剤でしょっちゅう冷やしてました。
そこから半年間はかなりの痛みが続いていたので、皮膚が白くなろうが湿布を貼り続けるも、ほとんど改善せず。
そこから2年間は騙し騙し生活していたんですが、PCでの仕事量が増えて腱鞘炎がどんどん悪化。
整形外科に行っても整骨院に行っても同じような治療と湿布出されるくらいで、「これ治らないんじゃないのか」と憂鬱になってました。
その時に20代のころ経験した「湿布止めたら腱鞘炎が治ったこと」を思い出して、湿布の使用を停止。
ネットで調べてプロスタグランジンのメカニズムを知ったので、逆に血行を良くするために、適度に温めてストレッチ、筋膜はがし(筋膜リリース)を自分で試してみるようにしました。
結果、日に日に症状が良くなって、2か月後にはほとんど痛まない状態まで回復。
無理をすると痛み始めるので、今ではストレッチや筋膜リリースは欠かせません。
長年かけて辿り着いた腱鞘炎のストレッチ・ケア方法
長くなりましたが、ようやく本題です。
腱鞘炎を治す、起こさない為には、次の4つがポイントです。
- 患部周辺の血行促進
- 患部周辺筋肉の緊張を解く
- ずーっと同じ反復動作を防止する
- 手首や指に負担をかけすぎない
※なお、急性期の強い痛みの時だけ湿布・ゲル薬を使って、我慢できるくらいの痛みになったらその後湿布・ボルタレンゲルなどの類いの使用は中断します。
1.患部周辺の血行促進
患部周辺の血行促進。
これは、手をお湯に浸ける、湯船に入る、ストレッチが効果的です。
私の場合は仕事が立て込んでいる時、2時間に1度3分ほどお湯に手を浸けてからストレッチをします。毎日の入浴も欠かせません。
なお、ストレッチは必ず床で行います。
手首のストレッチと言うと、↑のようなやり方を思い浮かべる人が多いと思いますが、これは腱鞘炎治療やケアに大した効果はありません。逆に悪化させることもあります。
なぜかは分かりませんが、親指が伸びないことと関係しているんじゃないかと予想しています。
では効果的なストレッチ方法です。
お湯やお風呂で患部を温めたら、床に手の平・全部の指を逆手について、ググーッと10秒~15秒伸ばします。痛くない程度に伸ばすことがコツ。
次に手の甲を床についてストレッチ。これも10秒~15秒。
また、いろんな治療法やケアの方法を調べていると「腱鞘炎は首や肩こりも原因」と書いている人もいます。これはあながち間違いではありません。
首コリ・肩こりも指先の血行を阻害しますので、腱鞘炎の治りを遅くします。
私が酷い腱鞘炎痛に苦しんでいた頃、肩こりの強さに比例して腱鞘炎も痛くなっていました。逆に、肩こりが緩和すると腱鞘炎の痛みも緩和していました。
2.患部周辺筋肉の緊張を解く
患部周辺筋肉の緊張を解く方法は、筋膜リリース(筋膜はがし)が効果的です。
同じ動作をし続ける事で筋肉とそこを覆っている膜が癒着してしまいスムーズな動きができなくなって、その周辺を走っている神経に触れて痛みが出るメカニズムがあります。
そこで筋膜リリースをしてあげると、筋肉周辺の動きや神経周りの環境が適正化されて、これも血行促進、痛みの緩和に繋がります。
筋膜の癒着について説明した動画をご紹介しておきます。
そして筋膜リリース(はがし)の動画もご紹介。
↑は指の腱鞘炎の場合に有効な筋膜リリースの方法です。
手首の場合は、片方の指3~4本で腱鞘炎になっている手首をちょっと強めに10秒ほど撫でるだけでOKです。
3.ずーっと同じ反復動作を防止する
主な腱鞘炎の治療ストレッチは今までご紹介した1と2の方法をやっていればOKです。
これと同時に、指や手首に同じ負担をかけない、反復動作をしない環境づくりが必要になります。
マウスの使用が辛い場合
マウスの利用が辛い場合は、痛みが引くまでフットスイッチを利用するか、マウスを変更します。
私が腱鞘炎で辛い時に重宝したUSBフットスイッチ。右クリックや左クリックをフットペダル割り当てられるので、マウスはカーソルを移動するだけの目的になります。
最初は慣れませんでしたが、フットスイッチのおかげで腱鞘炎の治りが早まりました。
マウスが使えるようになったら、複数のマウスを入れ替えて使います。
これは手の同じ部分への負担をかけないためで、違うメーカーや形のものを入れ替えて使うと良いです。
クリックの圧が軽いマウスを探すことも必要です。
ELECOMの握りの極みシリーズはクリック圧が小さいので、負担が少ないです。
垂直型マウスも腱鞘炎防止には効果的です。
人間の体は本来、手のひらを縦にして置くことが肩や手に負担がかかりにくいんですね。
↑これが垂直型マウス。変わった形ですが、腕が自然な形で机に置くことができるので、負担が少なくなります。
私が使っているのはちょっと大きいので、ELECOMやサンワサプライあたりでも探せばもう少しちいさいものもあります。
4.手首や指に負担をかけ過ぎない
手首や指への負担軽減も、腱鞘炎防止や治療に大事です。
キーボードのタイピングで手首が痛まないように、アームレストなんかが売っていますよね。
結論から言うと、これは失敗。腱鞘炎で手首が痛い時って、柔らかいアームレストに手首を置いても患部がピンポイントに触れるので、結局痛いんです。
そこでいろいろ試して行き着いた方法がこちら。
手首にタオルを巻きつけてデスクワーク。
タオルなら高さの調節も自在に出来るし、圧が分散されるので手首が痛みにくくなりました。しかも安上がりです。
また、指に負担が少ない、キータッチが軽いキーボードも腱鞘炎ケアに重宝しています。
私が使っているのが、東プレのREALFORCE30gキーボード。タッチが羽のように軽いので、指への負担が大幅に減りました。
これ無しではもう生きられません。
まとめ
まとめます。
腱鞘炎の治療・防止・ケアに必要なことは以下の5つです。
- 湿布・消炎鎮痛薬は使わない(痛みが急性期の時は使ってOK)
- 患部周辺の血行促進
- 患部周辺筋肉の緊張を解く
- ずーっと同じ反復動作を防止する
- 手首や指に負担をかけすぎない
残念ながら腱鞘炎が改善するメカニズムやエビデンスはご紹介出来ませんが、長年苦しんであれこれ試行錯誤した経験から辿り着いた方法です。
腱鞘炎に苦しんでいる方にご参考頂ければ幸いです。