盛岡さんさ踊りの太鼓用の撥にも、実は種類がいろいろとあるので、軽くご紹介しておく。
木の材質
盛岡さんさ踊り太鼓の撥に使われている木の種類について踊り手に聞くと、「樫の木」と「コメの木」という言葉が出てくる。
樫の木
樫の木はこんな葉っぱでどんぐりが成る木。林や森に行けば生えてるので、見たことは有る人も多いんじゃないでしょうか。
樫の木の撥だと、表面はこんな模様が付いている。固くて適度に重いことが特徴。工場加工で大量生産しやすいことから、よく出回っている。
手触りはちょっとザラつくが、盛岡さんさ太鼓を打つことに何ら問題は無い。
コメの木
ずっと分からなかったのが「コメの木」で、太鼓屋さんに聞いたら本当の名前は「紫式部(むらさきしきぶ)」だそうだ。
ブルーベリーみたいな実を付ける低木樹で、この実が「米っぽい」からコメの木と言ったという説もあるし、この木の別名「コメゴメ」から名前が付けられたという説もある。別名, ミムラサキ、コメゴメ. Japanese Beautyberry(英) 。
コメの木の表面はツヤっとしていて、肌触りが良い。盛岡さんさ踊り太鼓をそれなりにやり込むと、この撥が欲しくなる人・使っている人は多いんじゃないでしょうか。
また、コメの木の撥には芯が入っていることが特徴。この芯が音に影響するわけじゃないだろうけど、気分的には何となく良い。
手に持った感じもしっとりと馴染んだ感じがするので、皮を打つ時の握り込みが樫よりはやりやすいと感じている。
コメの木は残念ながら樫の木より脆い。使ってると1年経たないうちに表面がボロボロに剥げてくる。
特に湿度の高い時期は剥げやすいんだが、これは木の性質によるものらしい。
太鼓屋さん曰く、「コメの木は作り手が少なくなってきているし、もったいないから、練習用と舞台用で分けて使っても良いと思う」とのことだ。
コメの木の撥はできあがるまで〇年かかる
私は気軽に使っていたコメの木(紫式部)の撥だが、実は出来上がるまで8年もの期間を必要とするらしい。
木自体の成長スピードが遅いことが主な理由で、さらに木が乾燥している真冬に伐採して加工する必要があるという、もの凄く手間がかかってる物なんだそうです。
太鼓屋さんも「これ作るのは面倒くさいんだな、寒いの我慢しなきゃいけないし」と言ってるくらい、大変らしい。(これからは有難く使わせて頂きます))
謎の木(名前忘れた)
ということで、太鼓屋さんから紹介された新しい材質の木。名前がカタカナで長くて忘れてしまったが海外の木で、丈夫で重いことが特徴。水に入れると沈むくらい重いらしい。
通常、大人用の撥1本の重さが90グラムから100グラムほどであるのに対して、この木の撥は1本の重さが120g。
女性に使いこなすのはほぼ無理だと思うくらい重め。100グラムの撥に慣れている人がこれを使ったら、叩いて10分後くらいには肩と背筋の疲労感が凄いことになる。
表面はこんな感じ。一見、檜っぽい感じがするが、遥かに重い。でも、上手く使いこなせると「パーン」という良い音も出しやすくなる。
だがコメの木より手に入りやすく、工場加工で制作ができるので、強打する踊りの練習用にはこの撥を使っていこうと思う。
多分一番重い撥は150グラム
たぶん、現状で一番重い撥は1本150グラムの撥だと思われる。↑の写真では一番左側の撥で、三本柳さんさのハードな打ち手が使うような撥。
太鼓屋さんが「盛岡で作り手が亡くなってしまって、手に入りにくいお宝撥なんだよな~」と言いながらも譲ってくれたものだ。
この通り、通常の100グラム撥よりも太いことがすぐに分かる。長さも通常の38cmより3cmも長く41cm。遠心力と重さを利用すれば「バチコーーン!!」という響く音を出せる。
ただ、肩回りが相当鍛えられてないと扱うのが難しいし、テンポが速い踊りでは使いにくい。普段100グラム撥を使っている人には、音も疲労感も別世界級。
特殊形状の撥
これは特殊形状の撥。一見普通の撥と変わらなく見えると思うが、先端と中央で撥の外径が異なる。
中央部が外径19mm、先端部が22mm、長さ40cm、重さ120g。先端部を重くすることで遠心力が付きやすい、打感も良し、なのに中央部は細いから全体的な重さは適度という素晴らしい撥。
これは先輩から頂いたものでとても気に入って舞台で使っているが、コメの木特有の運命でボロボロになってきている(悲)
これを作るのは面倒らしく依頼しても敬遠されるので、もう手に入らないんじゃないかと思って現在作ってくれる職人さんを探し中。
太鼓の撥もいろいろ
ということで、盛岡さんさ踊り太鼓の撥にもいろいろあることがお分かり頂けたのではないでしょうか。
材質の他にも、一般的には太さが18mm~21mmまであります。女性は外径19mm~20mmくらいのものを使うのが一般的ですが、強い音を求める人は頑張って外径21mmのものを使ってたりするようです。
撥の種類、重さ、長さで音が変わることが面白いと感じています。