今や盛岡市内に1万個はある、盛岡さんさ踊りの太鼓。
今回は、”盛岡さんさ太鼓がどうやって作られているか”を、高松武雄太鼓店の店主・高松仁一さんに教えて頂きました。
盛岡さんさ太鼓が出来るまで
盛岡さんさ太鼓を作る工程は、”ほとんどが手作業”です。高松武雄太鼓店の作業場はシンプル。
たくさんの道具があると思いきや、メインで使うものは↑を見て頂いて分かる通り少ないそうです。ほかには太鼓の皮を鞣す(なめす)道具も使用するそうですが、これが太鼓の鳴りの重要なポイントになるため、企業秘密とのことでした。
各太鼓店も、なめし道具と方法は部外者には見せてくれないのだとか。
太鼓の皮を伸ばす
↑これ、なんだか分かりますか?
水に浸した太鼓の皮を伸ばしてるところなんです。触ると湿っぽくてブヨブヨしています。そして鳴りが良い伸び具合のところで”縫い”の作業を行います。
縫いの間に皮がどんどん乾いて縮んでしまうため、スピーディーかつ正確に縫う技術が必要だそうです。
使用している皮
使用する皮は牛の皮。岩手畜産流通センターから入手しています。入手時は牛の脂肪がたくさんついていて、それらを綺麗に落とす作業も行います。
皮は生きているものだから、そのままだと腐ってしまいます。よって防腐のために、すぐに塩漬けにしているそうです。
太鼓の皮縫い
太鼓を縫う糸も、同じく牛の皮から作った糸。これを使ってサクサクと縫っていくと、
後ろ側、
前側。このようになります。太鼓はこの”縫い”の工程が終わった時点で、どんな音になるかが決まってしまうそうです。太鼓のミソになる部分ですね。
次に太鼓の桶の部分組み合わせる縁も作ります。
この工程も太鼓の鳴りに大事なポイントになるそうです。丁寧な作りであるほど、音が均一に、鳴りやすくなるとのこと。
高松武雄太鼓店は、この”へり”部分の作りがかなり丁寧な仕事をしています。↑の画像でも分かる通り、しっかりかつ滑らかに作られています。
ここの作りが粗いと、太鼓の桶部分との組み合わせが悪くなり、鳴りにも影響してくるそうです。
塗り
皮がしっかり乾いたら、次は塗り。盛岡さんさ太鼓の柄は他の太鼓と違って特有です。赤の△マークは、岩手山を表現しているそうです。
太鼓の裏側もしっかり塗ります。
塗ったらしっかり乾くまで吊るします。
こうして出来上がった太鼓の皮、実はすっごく丈夫です。この通り、人が乗ってもビクともしません。
桶と組み合わせ
皮の部分が完成すれば、あとは太鼓の”桶”と紐で組み合わせます。
実はこの桶、太鼓屋で作っているのかと思いきや、桶屋さんが作っているのだそうです。太鼓屋の仕事はあくまで”皮”の加工と組み合わせがメイン。
ちなみに、今まで盛岡の太鼓店に卸してくれていた桶屋さんが今年で無くなってしまうそうです。岩手県内で他の桶屋さんを探したのですが見当たらなく、いま近隣の県に桶を作ってもらうことになりそうなんだとか。
そうなると、来年から盛岡さんさ太鼓の値段が上がってしまうことになるそうです。買うなら今だそうですよ。
盛岡さんさ太鼓の出来あがり
あとは皮と桶と組み合わせて、紐で固定すれば盛岡さんさ太鼓の出来上がり。
工程を振り返ると、機械を使ってなく全部手作業なんですよね。都会の太鼓店だと機械を使ったりするそうですが、手作業で作られた太鼓のようには鳴りにくいそうです。おまけに値段も倍くらいするそうです。もし盛岡さんさ太鼓が東京で販売されるとしたら、相場は15~16万円くらいするらしい。
それだけ手間と時間がかかっているんですね。なのに盛岡では8万円~9万円で買えてしまいます。
1回買えば一生使えるし楽しめます。そう考えると盛岡さんさ太鼓は高くないし、良い買い物ですね。
今回の取材に協力して頂いた、高松武雄太鼓店の店主・制作者の高松仁一さん。
現在77歳。「太鼓作りは楽しんでやっている」と仰っていました。体が動く限り、これからも太鼓を作り続けていくと意気込んでいました。
盛岡さんさ踊りの太鼓作りをずっと支えてきた職人さんのおかげで、いま自分も盛岡さんさ踊りを楽しめています。
この度はご協力ありがとうございました!これからも宜しくお願い致します!
高松武雄太鼓店
住所:岩手県盛岡市城西町13番7号
TEL:019-622-6561
FAX:019-622-6580